無線ハッキングガジェット「Flipper Zero」で知られる Flipper Devices が、2026 年 5 月 21 日、新型デバイス「Flipper One」の開発を発表した。同社はこれを Flipper Zero の後継ではなく「別カテゴリの製品」と位置づけている。イルカのアイコンで親しまれた手のひらサイズの玩具的ガジェットが、Linux を積んだ本格的なネットワーク機器へと姿を変える。
「物理レイヤーの玩具」から「IP の実戦ツール」へ #
Flipper Zero が得意としたのは、サブ GHz 帯の無線リモコン、RFID/NFC カード、赤外線といった「オフラインの物理プロトコル」だった。Flipper One が狙うのは、その一段上の IP ネットワーク層 だ。
ハードウェアは別物と言ってよい。8 コア SoC「RK3576」に 8GB RAM、Wi-Fi 6E、Gigabit Ethernet 2 ポート、M.2 スロットを備え、5G/LTE や衛星通信(NTN)の拡張にも対応する。OS は Debian 派生の「Flipper OS」。要するに、ポケットに入る Linux マシンに無線インターフェイスを満載したものだ。
セキュリティ屋の目線で言えば、これは Hak5 の Wi-Fi Pineapple や Raspberry Pi ベースの自作ペンテスト機が長年担ってきた領域に、洗練された量産ガジェットが正面から踏み込んできたことを意味する。スキャンも無線傍受もパケット解析も、追加の機材なしに 1 台で完結する。
ローカル AI とオープン開発という二面性 #
RK3576 は NPU を内蔵し、Flipper Devices は「Flipper One 上で動く専用 AI モデル」をコミュニティと共同開発するとしている。スキャン結果の解釈や攻撃ベクトルの提案を端末内の AI が補助する未来は、攻撃側にとっても防御側にとっても無視できない変化だ。
一方で同社は、チップ仕様の全面公開や Collabora と組んだ Linux カーネル対応など、徹底したオープン開発を掲げる。透明性は監査可能性につながり、研究者にとっては朗報といえる。
ただし Flipper Zero は、車のキー信号を扱える点を理由にカナダなどで規制が議論された経緯を持つ。「誰でも買える IP 攻撃ツール」がさらに強力になる以上、デュアルユースをめぐる論争は確実に再燃する。ガジェットの善悪は使い手が決める——その古い命題が、また一段スケールを上げて戻ってきた。
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