たった1つのアンダースコアが招いた誤認 #
2018年、米ウィスコンシン州警察は、メッセージアプリ「Kik」で12歳の少女に性的な会話を持ちかけていたアカウント「fus__ro_dah」(アンダースコア2本、ゲーム『Skyrim』の掛け声が由来)を特定し、Kik社に情報開示を求める令状を送った。ところが令状に記載されたユーザー名はアンダースコア1本の「fus_ro_dah」。この1文字の食い違いが、まったく無関係のカナダ人男性ブランドン・クレイム氏を冤罪へ突き落とすことになった。
fus__ro_dah。令状記載: fus_ro_dah。メール→Google→ISPと連鎖した誤認証拠 #
捜査当局は開示されたメールのGoogleアカウントログイン履歴からIPアドレスを割り出し、地元プロバイダBell Aliantへの照会で住所を特定、2020年2月にクレイム氏を逮捕した。本人の端末を解析しても少女との会話・通話・画像は一切見つからなかったが、2023年に起訴、2024年に有罪判決を受け18カ月の実刑を完遂した。控訴弁護士Zeb Brown氏が6年越しにアンダースコアの食い違いに気づき、2026年7月23日、ノバスコシア州控訴裁判所はクレイム氏を「事実上の無実」として無罪を言い渡した。
クレイム氏の端末からは、少女との会話・通話履歴・画像は一切発見されなかった。有罪の根拠は「アカウント→メール→IP→契約者」という間接証拠の連鎖のみだった。
OSINT捜査の連鎖は「最初の1文字」で崩れる #
この事件が示すのは、デジタル証拠の連鎖(チェーン・オブ・カストディ)は最初の識別子が誤っていれば、以降の手続きがどれだけ適正でも誤りごと積み上がってしまう脆さだ。物的証拠ゼロでも「アカウント→メール→IP→契約者」という間接証拠の連鎖だけで有罪立証が成立してしまう現状は、OSINT実務者・捜査機関双方に一次照会の再確認体制を突きつけている。
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