家庭のルーターが犯罪の踏み台に ── 「レジデンシャルプロキシ」1日2.7万台の衝撃 のサムネイル
INTRUSION / 不正アクセス 重要度 中 2026-07-30

家庭のルーターが犯罪の踏み台に ── 「レジデンシャルプロキシ」1日2.7万台の衝撃

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「いつもの自宅回線」が攻撃者の隠れ蓑になる #

NICT・総務省・警察庁は2026年7月21日、家庭用IoT機器を乗っ取り、攻撃者の通信を中継させる「レジデンシャルプロキシ」の実態を示すファクトシートを公表した。ルーターやネットワークカメラなどがマルウェアに感染すると、攻撃者の指令サーバーに接続され、第三者の通信を代理送信する踏み台に変えられる。攻撃者はこれを経由することで、発信元をごく普通の家庭の回線に偽装し、追跡やブロックを困難にする。

レジデンシャルプロキシの仕組み: IoT機器感染からC2接続、中継、銀行への偽装までの4段階フロー図
IoT機器の感染から「普段の自宅回線」への偽装までの流れ

数字で見る規模と実害 #

観測によると、2026年1月以降、1日あたり最大約2万7千個のIPアドレスが出口ノードとして稼働しており、国内では数万台規模のIoT機器がレジデンシャルプロキシ化していると推定される。実害も無視できない水準だ。2024年のインターネットバンキング不正送金のうち1,918件・約28.9億円がレジデンシャルプロキシ経由と判明しており、これは被害件数全体の約44%、被害額全体の約33%を占める。

ネットバンキング不正送金の被害件数44%・被害額33%がレジデンシャルプロキシ経由というドーナツグラフ
2024年の不正送金被害に占めるレジデンシャルプロキシ経由の割合

ハッカー視点: なぜ厄介なのか #

データセンター発のVPNやプロキシなら、既知のIPレンジをブロックすれば銀行側は比較的容易に防げる。だがレジデンシャルプロキシは実在する家庭の動的IPそのものであり、「いつもと違う場所からのアクセス」を警告するリスクベース認証や地理的フィルタリングを正面から無力化する。攻撃者から見れば身元を隠す使い捨てのインフラを合法的なサービスのように調達できる格好の手段であり、感染済みIoT機器の通信経路を時間貸しする闇市場サービスが流通している実態も海外では指摘されている。持ち主である一般ユーザーは自分の回線が悪用されていることに気付きにくく、被害届が出されないまま放置されやすい点も検知を難しくしている。

対策として、出所不明のソフトやフリーVPNを安易に導入しないこと、ルーターやIoT機器のファームウェアを常に最新に保ち初期パスワードを変更することが利用者側の基本線として挙げられている。事業者側には、組織が把握していない未承認機器のネットワーク接続を遮断し、業務系ネットワークとゲスト・IoT系を分離することが求められる。「自分の家のルーターが被害者ではなく加害者側に回っているかもしれない」という前提に立った見直しが必要な段階に来ている。

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