一人のポストが35年の記録を破った #
2026年9月3日、AIコーディング企業Cognitionのエンジニア、Eric Lu氏がXに投稿した内容は「130桁の数字」の羅列と、一言「divides RSA-260」だけだった。RSA-260は1991年開始の「RSA Factoring Challenge」が用意した260桁(862ビット)の合成数で、35年間誰も素因数分解できずに残っていた"未踏の看板"だ。Lu氏は単独で、約7カ月かけてこれを解いたと明かしている。使用した手法や計算資源、所要時間の詳細は本稿執筆時点で未公開のままで、専門家の間でも憶測を呼んでいる。
チームとスパコン前提が崩れた #
過去の記録更新は組織戦だった。前回のRSA-250(2020年)は研究者チームが数千コア年規模の計算資源を投入して解読した成果だ。今回はそれより大きいRSA-260を、肩書きも計算資源も明かさない個人が単独で破ったことになる。しかも真偽検証は容易——公開された130桁の数値がRSA-260を割り切るかは誰でも手元の計算機で確認でき、捏造の余地は薄い。だからこそ「アルゴリズムが進歩したのか、それともクラウド計算力の物量作戦なのか」という問いが専門家の間で飛び交っている。
| 項目 | RSA-250 | RSA-260 |
|---|---|---|
| 解読年 | 2020年 | 2026年 |
| 体制 | 研究者チーム | 個人エンジニア |
| 手法・計算資源の公開 | ○ | ×(未公開) |
2048ビットは揺るがないが、棚卸しの好機 #
現行の推奨鍵長である2048ビットRSAを破るには、今回の成果と比べて桁違い(2の34乗倍)の計算量が必要で、実務上の脅威にはまだ遠い。とはいえ計算資源のコモディティ化と手法の改良は、着実に「解ける桁数」を押し上げてきた歴史がある。鍵長の世代交代は数年がかりの移行作業になるため、自組織のTLS証明書や署名鍵が旧世代の鍵長に依存していないか、この機会に棚卸ししておく価値はあるだろう。
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