2026年7月31日、トルコで包括的な「サイバーセキュリティ法(第7545号)」が施行された。制定の背景には2024年9月、政府サーバーから1億人以上の個人情報が盗まれた大規模流出事件がある。だが新法の目玉は防御力の強化ではなく、大統領直属機関へのコンテンツ削除権限の集中だ。
「先に削除、あとで裁判所」への転換 #
新法は大統領・副大統領・全閣僚級など11機関からなる「サイバーセキュリティ委員会」を新設し、情報通信技術庁(BTK)が持っていた権限の一部をサイバーセキュリティ総局へ移管した。従来は裁判所の事前命令が必須で、命令発出から4時間以内に削除する仕組みだったが、新制度では総局が先に削除を実行し、プロバイダは2時間以内に対応、24時間以内に治安判事へ報告、48時間以内に事後承認を得る流れに変わる。非順守のプロバイダには2万〜10万リラ(約6万〜33万円)の罰金が科される。
| 項目 | 旧制度 | 新制度 |
|---|---|---|
| 削除の順序 | 裁判所命令が先 | 削除が先、承認は後追い |
| 事後の司法審査 | あり(事前) | 48時間以内に事後承認 |
| 権限の所在 | BTK(独立規制機関) | 大統領直属の総局 |
セキュリティ業界が警戒すべき先例 #
デジタル権利団体IFODは「透明性と司法監視の後退」だと批判している。トルコは政治的緊張時にSNS遮断を繰り返してきた実績があり、2025年3月のイスタンブール市長逮捕時にはX・YouTube・Instagramが約42時間遮断された。今回の枠組みはその追認とも言える。「サイバーセキュリティ」を名目にした削除権限の一元化は、脆弱性情報の公開や内部告発サイトなど、正当な情報流通も巻き込みかねない。同種の制度設計は他国でも検討され得るモデルケースとして、業界は注視すべきだろう。
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