声を盗む攻撃の実態 #
生成AIによる音声合成が急速に精度を上げる中、経営者や取引先になりすまして法人口座から金を奪う「ボイスフィッシング」が深刻化している。警察庁によれば2025年のネットバンキング不正送金は4,747件・約104億円に上り、うち法人口座を狙ったボイスフィッシングは143件・約45億円で全体の4割を占めた。1件で4億円を超える被害も報告されている。
7月14日のオンラインセミナーでは、元警視庁職員とAI音声企業のCEOが手口を実演した。CEOが披露したのは「Zero Shot」と呼ばれる音声合成技術で、従来30分〜1時間必要だった学習用音声がわずか10秒で済む。その場で参加者の声を数秒録音し、即座にクローン音声で送金を指示する詐欺電話を再現してみせた。声質も感情も本人と聞き分けがつかないという。
技術より先に手順を固める #
攻撃者は緊急性・恐怖・権威を演出し、「電話を切る」「公式番号にかけ直す」という基本動作を封じにかかる。元警視庁職員が示した対策の枠組みは「プロトコル(運用手順)・テクノロジー・ピープル(教育)」の3層で、まず据えるべきは属人的判断に頼らない確認手順だという。
もっとも別の専門家の調査では、セキュリティ教育を受けても行動が変わった人は42.9%にとどまり、不審メールを受けても報告しない人が19.1%いた。技術が声を完全に模倣できる以上、最後の防波堤は「怪しい送金指示は一度電話を切り、正規の番号にかけ直す」という組織のルールを全員が反射的に実行できるかどうかに懸かっている。
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