震源はデマの震源にもなった #
2026年7月28日、最大震度7を観測した「令和8年熊本地震」の直後から、SNS上ではおびただしい量の偽情報が同時多発的に拡散した。「地表付近への電磁波照射が原因」「震源の浅さは人工地震の証拠」といった疑似科学的な主張は、日本地震学会が改めてFAQで「現実的ではない」と否定する事態に発展した。イオンモール熊本で起きた爆発事故を巡っては、自撮り映像や建物倒壊映像を装う生成AI製の偽動画が拡散し、国立情報学研究所の越前功教授がAI生成と特定。報道機関を装う偽ニュース動画までYouTube上に出回り、NHKが取材で「生成AIによる偽動画」と断定する異例の事態となった。
検証に使ったAIが「本物」を誤爆した #
今回とりわけ深刻だったのは、能登半島地震など過去の災害映像を熊本地震の映像と偽って使い回す手口に加え、防災情報サービスのスペクティ社が生成AIの回答を根拠に「本物の可能性が高い現場映像」を過去のものと誤って判定し、拡散する動きが目立った点だ。攻撃側だけでなく検証側までAIに依存し始めたことで、真偽判定そのものが揺らぐ「AI対AI」の構図が生まれつつある。実在しない住所を記した偽の救助要請は文面がほぼ同一の複数アカウントから投稿され、QRコードやPayPayでの送金を求める詐欺も横行した。「地震を予測し的中させた」と不安を煽る投稿は、NHKの取材時点で300万回以上表示されていたという。

平時のうちに備えるべきこと #
生成AIによる偽動画は解像度・自然さともに年々向上しており、目視だけでの真偽判定はすでに限界に近づいている。個人にできる対策は、一次情報を気象庁・自治体・報道機関の公式アカウントに限定し、感情を煽る投稿ほど拡散前に一呼吸置くことだ。企業やセキュリティ担当者にとっては、AIファクトチェックツールを導入する際も「AIの判定を鵜呑みにしない人間のレビュー」を組み込む設計が必須になる。災害情報であれ何であれ、生成AIは攻撃側と防御側の双方の武器になり得るという前提で、平時から検証体制を作っておく必要がある。

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