6棟から10棟へ、追加投資1000億ドル #
TSMCのシーシー・ウェイCEOが、アリゾナ州で少なくとも4つの半導体製造工場と先端パッケージング施設を追加建設すると明らかにした。投資額は約1000億ドル(約16兆2000億円)、既存の1650億ドル(約26兆8000億円)と合わせると、アリゾナ拠点の工場数は6棟から10棟に増える。米台貿易協定で目標とされる12工場に近づく規模だ。

新工場では2nmクラスのウエハーを月産約2万枚生産できる見込み。ウェイCEOは投資時期を明言していないが、背景にはAI需要の急増で既存工場の生産能力が限界に近づき、納期遅延が常態化している事情がある。TSMCのアリゾナ投資は2020年の第1工場着工以降、拡張のたびに規模を上積みしてきた経緯があり、今回もその延長線上にある。台湾以外での増産は、単なる工場拡張ではなく需給逼迫の解消策そのものだ。
分散生産は「安全保障」の話でもある #
先端半導体の生産が台湾に集中している状態は、地震や地政学的緊張が起きれば世界のIT・防衛・金融インフラが一斉に止まりかねない「単一障害点」だとかねて指摘されてきた。米国内での量産能力拡大は、供給網の可用性を高める意味で安全保障上の意義が大きい。

ただし供給網の「可用性」が上がっても、チップの「真正性」の課題は別物だ。製造拠点が増えるほど、ハードウェアインプラント対策やサプライチェーン全体でのトレーサビリティ確保はむしろ複雑になる。拠点が分散すればするほど、設計データや製造装置の管理・監査対象も広がり、攻撃対象領域(アタックサーフェス)としては拡大する側面もある。台湾がこの投資と引き換えに対米関税15%を得た構図も含め、半導体はもはや純粋な産業政策ではなく、可用性と信頼性の両方を問われる安全保障インフラとして扱われ始めている。
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