2026 年 6 月 11 日、フランスの外国デジタル干渉監視機関 VIGINUM が、イスラエル企業 BlackCore による多国間にわたる選挙介入工作を公表した。仏 3 月地方選挙で極左政党を狙ったオペレーションが端緒だが、技術調査の結果、同じ手法が ニューヨーク市議会選 (2025)・スコットランド 5 月選挙・アンゴラ・トーゴ にも適用されていたと判明している。
手口:生成 AI で量産される「世論」 #
BlackCore のオペレーションは、生成 AI で動作するボットアカウント群が SNS 上で標的に否定的コメントを浴びせる、影響力工作 (Influence Operation) の典型パターンだ。VIGINUM によればスコットランドでは「前例のないレベルの否定的反応」が観測されている。LLM の登場で、各言語のネイティブ風コメントを違和感なく大量生成できるようになったことが、こうした多国籍展開を物理的に可能にした。「明らかに翻訳ツールを通した不自然な文章」という従来のボット検知ヒューリスティクスは、もはや成立しない。
真の問題:「発注元不明」のサービス産業化 #
注目すべきは、VIGINUM が「この工作の背後にいるスポンサーを特定できなかった」と明言している点だ。BlackCore は実行部隊にすぎず、買い手は別にいる ─ つまり選挙介入が サービスとして外注可能な商品 になっている、ということを意味する。
2010 年代後半のロシア IRA (インターネット・リサーチ・エージェンシー) は国家主体だったが、BlackCore のような商業ベンダの登場は「資金さえあれば誰でも国外選挙に介入できる」時代の到来を意味する。実行者と依頼者を切り離すことで、関与国家の特定 (アトリビューション) を構造的に困難にする ─ これが商業モデル最大の「機能」だ。
国内にいると遠い話に聞こえるが、SNS 経由の世論誘導には国境がない。地政学的緊張が高まるなかで、日本の選挙もいずれ同種の標的になり得る ─ そして検知側はそれを「日本語が変だから外国」と判定できない時代に既に入っている。
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